• 獨自の冷卻制御でトレードオフの特性を両立- NIS?NES(特許取得)

    赤池氏

    かつては不可能と言われた、ダイカスト金型(熱間金型)の“高靭性化”と“熱処理歪低減”の両立を、焼入れ冷卻中の各溫度域での冷卻速度を最適化することで実現した低歪?高靭性熱処理「NIS?NES」。いまや業界高品質標準となった同技術の開発は、自動車の軽量化対策により大型化が加速し、使用條件も年々過酷化していたダイカスト金型の高靭性化に対応する新鋼種「YEM4スーパー(現在のDAC10)」が登場した1987年にまで遡る。

    當初、YEM4スーパー(熱間ダイス鋼)を開発した日立金屬からは、高靭性を確保するために、直油冷による急速冷卻やソルトバスを用いたマルクエンチ※1法が提案されたが、鋼材は急冷すると収縮し、変形や割れが生じやすくなる。特に複雑な形狀をした金型での変寸は金型の作り直しに繋がりかねない。また、マルクエンチ法では生産性が上がらない。

    當時、市川工場で熱処理を擔當していた赤池成一は振り返る?!镐摬膜戊z性※2を高めるためには、炭化物※3を結晶粒界に析出させず、また、冷卻過程でベイナイト※4組織が生じないように急冷した方がいいのですが、冷卻速度が早いと歪が生じ材料の寸法が縮み、材料表面と內部の溫度差が大きくなると割れてしまいます。30年ほど前は、緩冷卻が常識で、変形や割れが生じにくいプロセスでしたが、生産性と靭性の向上が求められる中で、急速冷卻でいかに歪を低減させるかが大命題となりました」

    NIS?NESから生まれた鋼材の金屬組織
    (直油冷と比較)

    思案した結果、著目したのは、安全性の観點から高溫域を緩やかに空冷した後に油槽で急冷する、ダイカスト用スリーブ材に適用していた熱処理法だ。赤池は、「この方法を改善?適用すれば歪が低減できる」と確信し、日立金屬に提案。しかし、なかなか首を縦に振ってもらえない。納得してもらうために、時には徹夜で実験?検証、テストピースの製造を繰り返してデータを集積し、半冷までソフト冷卻してから急冷し、変寸を極小化する熱処理法を導き出した。

    「冷卻速度管理によって鋼の組織を調整し、直油冷に匹敵する靭性を確保しています。嬉しかったのは、その後、ご理解いただいたお客様とのパートナーシップのもと、迅速に品質評価?実機化を推進できたことです。生産性も向上しました。さらに、日立金屬冶金研究所の協力で分析を深めて理論を確立し、標準化にいたりました?,F在、大型ダイカスト金型用の熱処理を提供できるのは當社を含め數社しかありません。今後もトップランナーとして、新たな熱処理技術開発に挑戦し続けていきたいと思います」(赤池)。

    ※1 マルクエンチ: 焼入れによる変形の発生や焼割れを防ぎ、かつ、適切な熱処理組織を得るため、マルテンサイト生成溫度域の上部又はそれよりやや高い溫度に保持した冷卻剤中に焼入れして、各部が一様にその溫度になるまで保持した後、徐冷する処理です。マルテンパとも言います。
     
    ※2 靭性:割れやクラックの発生し難さの指標です。シャルピー衝撃値や抗折力などが一般的に使われ、數値が大きいほど靭性が高く、割れ難い傾向があります。
     
    ※3 炭化物:炭化物の中でも二次炭化物は、熱処理狀態により基地に溶け込んだり析出したりし、型材特性を変化させます。炭化物は基地よりもはるかに硬いので、炭化物が多いと摩耗し難くなりますが靭性は低くなります。
     
    ※4 ベイナイト:工具鋼を空冷等ゆっくり冷卻した時に現れる焼入れ組織です。冷卻速度が比較的遅くない場合は、針狀に近い下部ベイナイト組織となりますが、遅くなると、粗い板狀の上部ベイナイト組織になり、靭性が大幅に低下します。割れが問題になる工具は、ベイナイト組織を避けるため、油冷などの急冷焼入れを行います。

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